幼児教育は子供の成長と発達において重要な役割を果たします。近年、多様な教育アプローチが注目されています。こちらの記事では、注目されている5つの幼児教育について特徴とメリットなどをご紹介します。
1. モンテッソーリ教育
日本では、藤井聡太さんがモンテッソーリ教育を受けたことで広く知られるようになりました。世界的には、Amazon創業者のジェフ・ベゾス、Google創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンなど、著名な人物たちもモンテッソーリ教育を受けています。そんなモンテッソーリ教育とはどんなものなのでしょうか。
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的としています。
この教育法は、ローマ大学初の女性医学博士であり、女医の先駆者であるマリア・モンテッソーリ(1870~1952年)によって提唱されました。マリアは知的障害のある子どもの治療に従事する中で独自の教育方法を確立しました。その後、彼女は「子どもの家」と名付けた施設で、貧困層の健常な子どもたちに同じ方法を適用し、成果を上げました。この成功により、モンテッソーリ教育は世界中に広まり、日本でも40年以上の歴史を持っています。
モンテッソーリ教育の特徴
お仕事と呼ばれる取り組みを行うのが特徴的でもある、モンテッソーリ教育の特徴はこちら。
教室内はこどもたちの目線で自由に探求できるように整えられており、取り組む活動を「お仕事」と呼び、お仕事に使用される教具は、手の届きやすい場所に整理されており、自分の取り組みたいお仕事を自ら選んで行います。
社会生活や日常の生活で必要となる、食事をする際の所作、着替え、整理整頓などをモンテッソーリの教具や活動を通じて楽しく学べます。
アイマスクをつけて触覚から物を理解したり、視覚的に物事を理解するなどの力が身につきます。例えば、数の概念は実際にビーズがいくつか数えることで、抽象的な理解ではなく実際の体験を通じて自然に身に付きます。
モンテッソーリ教育のメリット
教師の指示ではなく、こどもが興味を持った活動に自ら取り組み、学び、考える力が身に付くため、創造力や独立性が養われ、自分の意見をしっかり伝えられるようになります。また、縦割りクラスのため、さまざまな年齢のこどもたちと関わることで、人の意見に流されにくい自立した人間に育ちます。
それぞれの発達段階や特性に合わせた教育を基本としているため、持って生まれた特性を最大限に生かすことができ、それぞれの個性が伸び伸びと育ちます。
クラス編成が縦割りのため、年齢を問わず意見交換したり、共に生活することで幅広い年齢ともコミュニケーションがとれます。年上の人を見て良い刺激を受けたり、年下の子の面倒を見ることで優しさを育んむなど、社会性の基礎が身に付きます。
こどもがお仕事に集中している間、教師は作業を中断させず、最後までやり遂げるのを見守ります。自発的な成長をサポートすることで、こどもはやりたいことを思う存分にできるため、達成感を感じますので、心に落ち着きが生まれ、情緒が安定します。
2. レッジョ・エミリア教育
こどもの発想力や主体性を伸ばしたいと考えている方に評価の高いレッジョ・エミリア教育。
レッジョ・エミリア教育とは?
レッジョ・エミリア教育は、イタリアの都市レッジョ・エミリアの発祥で、こどもたちが主体的に活動し、その個性を引き出すことを目的とした教育方法です。この教育方法では、100人の子どもがいれば100通りの考え方や表現方法があるという「100のことば」を理念に掲げています。プロジェクトベースの学びが特徴的で、グループに分かれてテーマについて話し合い、協調性や自立性を身に付けていきます。
レッジョ・エミリア教育の特徴
グループに分かれてテーマについて話し合い、半年から1年近くの期間をかけてプロジェクトを進めていきます。長期的にテーマに取り組むため、時間を制限せずに次の展開に進めていける点も特徴です。
施設内にはキッチンやお昼寝のためのお部屋、食事のスペースなどはあありますが、すべての部屋に壁がありません。そのため、より自由な環境で創造性を大切にして過ごすことができます。
こどもたちの日常生活を毎日記録し、発言や行動をドキュメンテーションとして動画や音声、写真、テキストなどで記録を残します。記録を保護者に共有することで、学びや感情を振り返ることができます。
レッジョ・エミリア教育のメリット
プロジェクト活動は、こどもが好奇心のまま自由にどこまでも追求できるというメリットがあります。一般的な教育現場では、時間割やゴールが決まっており、教師や保育士が道筋に沿うよう誘導することがあります。しかし、「なぜ?」「どうして?」という疑問を大事にし、終わりの時間を気にせずに学ぶことができます。
5名程度で行われるプロジェクト活動は指示や誘導がないため、こども達がそれぞれの意見を出し合いながら、話し合いや作業を進めるので、他の人の考えに共感したり、自分の考えを主張する中で協調性や自主性が身に付きます。
プロジェクト活動を進めるには、交渉力や提案力はとても重要なポイントです。自身がやってみたいと思うことでも、メンバーを説得できなければ企画は認めてもらえませんし、プロジェクトの進行もできません。提案するときの工夫や話し方を学び、繰り返し経験していくことで高い交渉力が身に付きますし、自己表現力も豊かになります。
3. シュタイナー教育
モンテッソーリ教育についで人気のあるシュタイナー教育。シュタイナー教育では、7歳まで文字を学習させない、テレビは見せないなどのルールでも知られています。こどもの個性を尊重し、総合的な能力を引き出すという教育で、世界60ヵ国以上の教育機関で取り入れられている教育メソッド。早速どんな教育か見ていきましょう。
シュタイナー教育とは?
シュタイナー教育とは、こども一人ひとりが最大限に能力を活用できるよう、個性の尊重を重視した教育法です。 哲学者であるルドルフ・シュタイナー博士が提唱し、1919年にドイツで創立した「自由ヴァルドルフ学校」において取り入れられました。 その後、ドイツを中心にヨーロッパやアメリカなど世界60カ国、1000校以上が実践し、約100年もの歴史があります。 1980年代に日本においても不登校児童生徒の居場所であるフリースクールで取り入れられ、現在ではさまざまな幼稚園や小中高等学校などで、シュタイナー教育を中心とした教育が行われています。
シュタイナー教育の特徴
シュタイナー教育では、発達段階を7年周期で3つの段階に分けて、身体・心・頭をバランス良く成長させる教育が特徴です。
- 身体を育てる「第1段階(0〜7歳)」は、遊びや運動によってしっかり身体を作る期間です。
- 心を育てる「第2段階(8〜14歳)」は、自然や芸術に触れ、豊かな心や感情を育てる期間です。
- 頭を育てる「第3段階(15〜21歳)」は、思考力や判断力といった自立に必要な力を養う期間です。
美しいリズムを重視したオイリュトミーという活動を取り入れており、音楽に合わせて身体を動かすことで、自分の気持ちを表現します。また、フォルメンと呼ばれる直線や曲線を用いた芸術活動も取り入れており、非化学模様などの線を描くことで、高い集中力や芸術的な感性を育てます。
基本的に少人数で異年齢の子どもたちが一緒に学ぶ縦割りクラスとなっており、年齢の異なるこどもたちが関わり合いながら活動することで、互いに学びを深められます。また、8から12年間の一貫教育が基本で、同じクラスの仲間とともに、同じ担任の先生と一緒に学ぶスタイルが特徴です。
シュタイナー教育のメリット
音楽や芸術に関する活動を重視しており、いわゆる勉学よりも感じ取ることを大切にしています。音楽活動や芸術活動に力を入れることで、豊かな感受性を育てられます。
プラスチックで作られたカラフルなおもちゃや、テレビゲーム、キャラクターなど飾りがあるものなどを避け、自然のなかで自由な発想で遊ぶため、想像力や行動力が身に付きます。
先取りして学ぶ早期教育とは異なり、学力でこどもの能力を判断しません。そのため、こどもはのびのびと個性を発揮することができ、自分だけでなく相手の意見も大切にできるような豊かな人に育ちます。
4. フレーベル教育
世界初の幼稚園を設立したことで有名なフレーベル教育は、ドイツの教育学者フリードリヒ・フレーベルによって創設された教育法です。幼稚園の原点とされる教育とはどんな物なのでしょうか。
フレーベル教育とは
フレーベル教育とは、ドイツの教育家であるフリードリヒ・フレーベルが生んだ教育です。1839年、フレーベルは世界で初めて幼児教育の指導者を育成するための機関を創設し、翌年にはその施設をKindergarten(幼稚園)と改名しました。遊びを通じて学ぶことを基本としており、これが現代の幼稚園の基礎となっていると言われています。
フレーベル教育の特徴
フレーベルは、すべてのものは神から創られたもので神の支配にある(神性)とし、それが人間の本質であると説きました。
遊びを通じて幼児特有の豊かな感性を育てる学びを実践しています。教師は遊びを強制せず、こどもの自発性を引き出す環境を整え、興味を高めるように工夫しています。
積み木の元になったと言われる恩物「ドイツ語でGabe(ガーベ)」は、現在も「フレーベルの積み木」として販売され、多くの人に愛用されています。この恩物はこどもがつかみやすいサイズに設計され、円柱・立方体・三角柱・直方体の形をしている積み木です。恩物は第一から第二十までありますが、日本では恩物は第十恩物までを指します。数が増えるごとに構造が複雑になるため、遊びを通じて自発性や創造性、集中力が養われます。
自然の営みを肌で感じるため、花や野菜を育てるなどの庭づくりを体験します。芽が出てから枯れるまでの過程を知ることで、草花だけでなく、小石や砂利、木などの素材に触れることも大切にしており、観察力などが養われます。
日常生活で経験することや、経験させておきたいことがテーマになっている歌が多く、親しみやすいのが特徴です。
フレーベル教育のメリット
恩物「Gabe(ガーベ)」を使った玩具で遊ぶことで、手先の細かな動きが上手になり、遊びを通じて創造性や想像力、そして集中力が養われます。形や数への理解も感覚的に身に付くため、数学的な感性や美的感覚も磨かれます。
庭づくりを通して草花だけでなく、自然に触れ合い、木などの自然素材に触れることも大切にしているため、自然素材を活用した作品づくりなどをすることで、観察力や知識はもちろん自然への理解と愛着の形成をします。
まとめ
幼児教育には様々なアプローチがあり、それぞれが独自のメリットを持っています。様々な教育がありますが、これらの教育法を理解し、自分のこどもに合った最適なアプローチを選ぶことで、豊かな成長と発達をサポートしていきましょう。